広告経由の売上が増えたとき、どの費用を引き、何を分母にすればよいのでしょうか。ROIとROASの違い、費用の内訳、具体的な計算例、継続購入を含める場合の考え方を整理します。数値を比較できる状態にして、次に調べる作業を決めます。
計算例は算式を理解するための仮定です。事業の成果実績や予算の推奨値ではありません。自社で使う場合は集計範囲と実際の明細をそろえます。

この記事でわかること 全7テーマ
01広告の採算を、同じ条件で説明する
クリックや売上が増えたとき、その増加にどれだけの費用がかかったかも確認します。ROIは投資に対する利益の割合を表す指標です。割合だけを見て判断するのではなく、計算に使った利益の金額と、集計の範囲を一緒に残すと、広告の採算を説明しやすくなります。
クリックから利益まで、異なる数字を区別する
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 操作 | クリックや電話ボタンのタップ |
| 成果 | 計測で定めた行動と、実際の予約・購入・契約 |
| 収益 | 対象の取引に対応する売上 |
| 費用 | 商品・サービスの提供と広告に使った金額 |
クリックした人が全員購入するわけではありません。問い合わせと受注も別の段階です。どの行動を測ったかを明示し、広告管理画面だけで確かめられない売上や原価は、受付・販売・経理の記録と照合します。
予算と担当者の間で、見方をそろえる
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | いつ発生した費用と、いつの成果を対応させるか |
| 範囲 | 広告出稿だけか、運用・制作費も含めるか |
| 担当 | 売上・費用・計測設定を誰が確認するか |
Google広告のコンバージョン計測は、設定した成果行動を記録する仕組みです。購入等の記録と照合して採算を確認します。 出典:Google 広告: コンバージョントラッキング
02ROIの計算式と、ROASとの違い
ROIはReturn On Investmentの略です。何を投資額とするかによって値は変わります。本記事は、広告関連投資を分母にする計算を中心に扱います。「利益」という言葉だけでは広告費を引く前か後か分からないため、以下の記号で範囲を固定します。
広告関連投資を分母にする式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| R:売上 | 対象の取引に対応する売上。返品等の扱いもそろえる |
| C:提供費用 | 対象の商品・サービスの提供費用。Aと重複させない |
| A:広告関連投資 | 媒体への出稿費、対象の運用・制作費など |
| P:広告関連投資控除後の利益 | R − C − A。この計算範囲における利益 |
広告関連投資に対するROI(%)= P ÷ A × 100 =(R − C − A)÷ A × 100 です。Aを引いた後のPから、さらにAを引くと二重控除になります。Aが0の場合、この割合は計算できません。会社全体の純利益や入金残高をそのまま示す式でもありません。
| 算式の範囲 | 計算 | 何を比べるか |
|---|---|---|
| 本記事の中心となる計算 | (R − C − A)÷ A × 100 | 広告関連投資に対する利益 |
| 提供費用も含める計算 | (R − C − A)÷(C + A)× 100 | 対象の総費用に対する利益 |
GoogleのROI解説では、利益と費用を使い、目的に応じて計算方法を定めます。物販の例は製造費と広告費を合わせた総費用が分母で、本記事のAだけを分母にする計算とは範囲が異なります。 出典:Google 広告: 投資収益率(ROI)
ROASは、売上と広告出稿費の関係を見る
| 指標 | このページでの式 | 読むときの違い |
|---|---|---|
| ROI | 広告関連投資控除後の利益 ÷ A × 100 | 提供費用と広告関連投資の範囲を定める |
| ROAS | 広告経由売上 ÷ 媒体への出稿費 × 100 | この式だけでは提供費用等を差し引かない |
ROASはReturn On Ad Spendの略です。Google広告ではコンバージョン値と費用の比率を扱います。コンバージョン値に売上以外を設定している場合、画面の値を「売上÷広告費」と読み替えないでください。
Google広告のROASは設定したコンバージョン値と費用の比率に関係します。売上を値に用いた場合の式を公式資料で確認しています。 出典:Google 広告: 目標広告費用対効果
割合と、残った金額を併記する
高い割合でも投資の規模が小さければ、利益の金額は小さくなります。逆に割合が低くても金額は大きい場合があります。異なる施策を比べるときは、同じ算式・期間で、売上、費用、利益額を併記してください。
03利益・費用・計算の順で、実際の数値をそろえる
1. 売上と提供費用を定義する
売上から何を引くかを、集計表の項目として決めます。配送費や決済手数料などを引いた独自の採算指標を、会計上の粗利益と無条件に同一視しないようにします。サービスの提供人件費も、実際の計算目的と経理上の区分を確認して扱います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品・材料 | 対象の取引に対応する仕入・製造等 |
| 配送・梱包 | 対象の出荷にかかった費用 |
| 決済 | 対象の取引に対応する手数料 |
| サービス提供 | 実際の提供工数など、採用した配賦基準 |
2. 広告関連投資の抜けと重複を点検する
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出稿 | 媒体へ支払う広告費 |
| 運用 | 外注費や担当工数のうち対象に配分した費用 |
| 制作 | 対象の広告・ページ制作費の扱い |
| ツール | 対象業務に対応する利用料 |
共通費を扱う前の確認
3. 数式に入れて、分母も書く
ここからの金額は算式を確認するための仮定例です。VONDSや顧客の成果、平均値、推奨予算を表すものではありません。まずAが10万円、R − Cが30万円なら、Pは20万円、広告関連投資に対するROIは200%です。この段階で含めていない費用があれば、会社全体の利益とは一致しません。
| 入力 | 仮定する金額 |
|---|---|
| 売上R | 100万円 |
| 提供費用C | 40万円(この例では売上の40%と仮定) |
| 媒体への出稿費 | 20万円 |
| 運用・制作の関連費用 | 5万円 |
| 広告関連投資A | 20万円 + 5万円 = 25万円 |
| 出力 | 計算(金額は万円) | 結果 |
|---|---|---|
| この範囲の利益P | 100 − 40 − 25 | 35万円 |
| 広告関連投資に対するROI | 35 ÷ 25 × 100 | 140% |
| 提供費用も含む総費用でのROI | 35 ÷ 65 × 100 | 約53.85% |
| 売上を使うROAS | 100 ÷ 20 × 100 | 500% |
ROASの500%とROIの140%は別の問いへの答えです。35万円の利益も、ここで定義した範囲の値です。この計算例の割合だけを理由に、継続や増額を決めることはできません。
04売上・経路・期間で、判断がずれる場面
売上が増えても、利益が増えるとは限らない
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売上増 | 件数・単価・返品の変化を分ける |
| 提供費用増 | 商材構成・配送・提供工数の変化を見る |
| 広告費増 | 出稿費と運用・制作費の変化を分ける |
率の変化だけでなく、どの金額が動いたかを追います。例えばROIが下がっていても、売上と利益額は増えている場合があります。同じ期間の値を並べ、何が分かったかと、追加で確認することを分けてください。

複数の接点を、重複売上にしない
経路と取引を照合する
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記録された経路 | ツールが観測できた範囲の接点 |
| 成果の配分 | 選んだモデルで接点へ割り振った値 |
| 因果関係 | 広告がなければ起きなかった成果かは、別の検証が必要 |
GA4のアトリビューション経路は、観測された接点とモデルによる成果配分を確認するための資料です。配分額を追加売上として重ねません。 出典:GA4: アトリビューション経路
期間とデータ量をそろえる
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成果までの日数 | 広告接触から購入・成約までの遅れを確認 |
| 比較対象 | 同じ期間・対象・費用区分で並べる |
| 記録の量 | 少ない件数から一般化せず、ばらつきを残す |
| 変化の時期 | 計測設定や配信・商品条件の変更日を記録 |
一律の月数やコンバージョン件数だけで判断時期を決めません。費用発生の月と成約した月をそのまま割ると、対応する取引がずれることがあります。どの費用がどの期間の成果に対応するかを説明できる集計にします。
05継続購入を含めるなら、期間と利益の定義を決める
LTVの金額が何を表すかを確認する
LTVは顧客生涯価値を表す言葉ですが、集計する売上・利益・期間は用途によって異なります。GA4のユーザーのライフタイムに関する収益指標を、そのまま利益ベースのLTVへ読み替えないようにしてください。ここでは、定めた期間の顧客ごとの利益を使う場合を考えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 金額 | 売上か、どの費用を引いた利益か |
| 対象 | 同じ時期に獲得した顧客等、比較する集団 |
| 期間 | 初回からいつまでを集計するか |
| 状態 | 実績か将来の予測かを別の列にする |
GA4の収益やライフタイム関連指標は、Googleの指標一覧で定義を確認します。売上ベースの値と利益は別です。 出典:Google Analytics: ディメンションと指標
初回と継続後を分けて読む
初回の広告関連獲得コストを8,000円、初回の提供費用控除後の利益を5,000円と仮定すると、この範囲の初回利益はマイナス3,000円です。将来の購入は確定していないため、この時点で継続後の黒字を実績として扱えません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売上 | 同じ顧客の追加購入を対応させる |
| 提供費用 | 追加の取引で発生した費用を引く |
| 維持費用 | 追加広告やサポート等の対象費用を確認 |
| 入金時期 | 利益の計算と資金回収の時期を分ける |
利益ベースのLTVで計算する仮定例
| 集計する範囲 | 獲得費控除前の利益 | 獲得費控除後の利益 | ROI |
|---|---|---|---|
| 初回のみ | 5,000円 | −3,000円 | −37.5% |
| 設定した期間の累計 | 15,000円 | 7,000円 | 87.5% |
累計15,000円は計算を示すために置いた仮定です。期間内の提供・維持費用を差し引いた後、獲得費8,000円だけをまだ引いていない金額とします。初回分は累計に含め、二重に足しません。累計がこの額になることや、リピート回数を保証するものではありません。
実績と予測を混ぜずに更新する
06ROIから、次に調べる作業を選ぶ
低いROIの原因を確認する
キャンペーンや対象商品など、判断できる単位に分けて確認します。細かく分けるほど件数が少なくなるため、明細のROIだけを機械的な停止基準にしないようにします。計測の不備と採算の問題も分けます。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計測 | 成果の漏れ・重複・別の行動の混入がないか |
| 販売 | 問い合わせ後の対応や成約状況はどうか |
| 費用 | 原価や関連費用の範囲が前回と同じか |
| 期間 | 未確定成果や計測の遅れが含まれていないか |
高いROIだけで増額を決めない
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利益額 | 率だけでなく利益の金額も確認する |
| 拡大 | 追加の支出でも同じ率になるとは限らない |
| 提供体制 | 受注・在庫・対応能力を確認する |
| 資金 | 費用の支払と回収の時期を確認する |
停止・継続・変更の判断には、計測、採算、事業上の役割、使える予算を合わせます。配分の変更だけで利益が増えるとは決めず、変更理由と検証する範囲を記録します。ここでは個別の広告アカウントの設定変更は扱いません。
集計を続けるためのチェックリスト
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 算式 | 分子・分母・税の扱い・期間・対象を記載 |
| 費用 | 運用・制作・ツール等の抜けと二重計上を点検 |
| 成果 | 注文・予約等と計測上の行動を照合 |
| 継続 | 初回と累計、実績と予測を分ける |
定期確認を次の作業へつなげる
07まず、売上と費用の内訳を用意する
ROIを計算する出発点は、売上、提供費用、広告関連投資を同じ範囲でそろえることです。ROAS、利益額、初回と継続後の値を区別すると、何が分かり、何がまだ分からないかを共有できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 広告媒体・対象商品・確認したい期間 |
| 売上 | 注文・予約・契約と対応する売上の集計 |
| 費用 | 出稿・運用・制作・提供費用の内訳 |
| 計測 | 成果にしている行動と計測設定の説明 |
今の集計表と、判断に迷っている点を整理してご相談ください。まず数値の定義と記録の対応から確認します。
広告の成果計測を相談する参照した一次資料
実務の進め方はVONDS編集部の整理です。本文で参照した仕組み・手順は、次の公式資料で確認しています。
- Google 広告: 投資収益率(ROI)確認日:2026年9月7日
- Google 広告: コンバージョントラッキング確認日:2026年9月7日
- Google 広告: 目標広告費用対効果確認日:2026年9月7日
- GA4: アトリビューション経路確認日:2026年9月7日
- Google Analytics: ディメンションと指標確認日:2026年9月7日

