転記、帳票の読み取り、サービス間の情報共有。自動化したい仕事によって、検討する道具は変わります。この記事では4つのタイプと製品の用途を比較し、自社の業務に合うかを確かめる手順を解説します。操作、費用、連携、運用体制を確認してから、最初に試す仕事を決めましょう。
各章の前半で概念を説明し、表や工程図で比較・手順を整理します。料金・導入実績・効果数値は未確認情報として扱い、実際の契約前に公式情報で確認する形で読み進めてください。

この記事でわかること 全10テーマ
01業務自動化ツールが注目される背景
業務自動化ツールとは、人がパソコン上で繰り返している作業をソフトウェアに肩代わりさせる仕組みの総称です。エクセルへの転記、メール送信、請求書発行、データ集計などが対象になります。
定型作業を減らしたい場合は、現在の処理時間と、作業に必要な人員を記録します。自動化にかかる設定・保守・確認の時間も見込み、どの仕事を変えるかを考えます。
クラウド型と、自社のパソコンやサーバーで動かす方式では、導入と管理の条件が異なります。使い始める費用だけでなく、契約期間、継続費用、解約時のデータの扱いも比較してください。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 業務量 | 作業名、件数、頻度、所要時間を記録します。 |
| 人員 | 通常の担当者と、確認・引き継ぎを担う人を整理します。 |
| 費用 | 初期設定、利用、保守、終了時にかかる費用を調べます。 |
| 方式 | クラウドと社内環境のどちらが、利用する情報や端末に合うかを確認します。 |
02業務自動化ツールの4タイプと役割
対象業務から、主な用途を4つに整理します。1つの製品が複数のタイプの機能を持つこともありますので、製品の呼び名だけで決めず、自社で実行したい作業と照合してください。

RPA:パソコン操作そのものを自動化する
RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)は、人がマウスやキーボードで行う操作を記録・再現する仕組みです。エクセルから基幹システムへの転記や、ウェブサイトからの情報収集など、手順が定まった定型作業に使われます。
iPaaS:複数のクラウドサービスをつなぐ
iPaaS(Integration Platform as a Service:サービス連携基盤)は、複数のクラウドサービス同士を連携させる橋渡し役です。「フォームに入力があったらチャットに通知し、表に記録する」といった連携を、プログラミングを使わずに設定できるものが多くあります。
AI-OCR:紙書類をデータ化する
AI-OCRは、請求書・納品書・申込書などの紙書類やPDFを画像認識で読み取り、文字データに変換する仕組みです。手入力による転記作業を減らす用途で使われます。読み取り精度は書類の形式や文字の状態によって変わるため、自社の実際の帳票で試すことが前提になります。
業務特化型SaaS:特定業務をまるごと扱う
勤怠管理、経費精算、請求、会計など、特定の業務領域を扱うサービスです。自社の処理手順と製品の流れが合うか、どこに個別設定や連携が必要かを確認します。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| RPA | 実際に使う画面で、定型操作と例外時の停止を試します。 |
| iPaaS | 接続先の項目名、権限、データ更新のタイミングを照合します。 |
| AI-OCR | 自社の帳票で読み取り結果を原本と比較します。 |
| 業務特化SaaS | 受付から処理完了まで、担当者が一連の仕事を試します。 |
| 自社の課題 | 検討するタイプ |
|---|---|
| 繰り返しのPC操作が多い | RPA |
| 複数サービス間で手作業の受け渡しがある | iPaaS |
| 紙やPDFの手入力が多い | AI-OCR |
| 勤怠・経費・請求など業務全体を効率化したい | 業務特化SaaS |
| 複数の課題が混在している | タイプの組み合わせを検討する |
03RPAカテゴリのツール
画面の操作を自動化したい場合に検討する製品です。API連携など、画面操作以外の機能も備える製品があります。自社の端末と対象システムで使えることを、導入前に確認してください。
UiPath
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 機能 | RPA、API連携、文書処理などの自動化を提供します。 |
| 確認 | 対象業務に必要な機能と、利用する環境を確認します。 |
UiPathはRPA、API連携、文書処理などの自動化機能を提供します。 出典:UiPath公式:自動化プラットフォーム
WinActor
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 機能 | パソコンの定型的な処理を自動化するRPAです。 |
| 確認 | OS、ブラウザ、対象アプリ上での動作を試します。 |
WinActorはパソコンの定型処理を自動化するRPAで、利用環境と対象画面の動作は自社の条件で確認します。 出典:WinActor公式:製品紹介
Power Automate
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 機能 | サービスをつなぐワークフローや反復業務の自動化に使えます。 |
| 確認 | 対象の接続先、必要なライセンス、実行方式を確認します。 |
Power Automateはサービスを連携するワークフローや反復業務の自動化に使えます。 出典:Explore the Power Automate home page - Power Automate | Microsoft Learn
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 正常時 | 入力から完了まで、期待した結果と一致するかを記録します。 |
| 例外時 | 画面表示や入力内容が変わった際に、止めて担当者へ知らせられるかを試します。 |
| 再実行 | 途中で止まった処理を再実行しても、登録や送信が重複しないかを確認します。 |
04iPaaSカテゴリのツール
連携したいサービスと操作を一覧にし、公式の接続先一覧と照合します。接続先に名前があっても、必要な項目や操作が使えるかは別に確かめてください。
Zapier
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 機能 | 外部サービスやデータを接続し、業務のワークフローを自動化します。 |
| 確認 | 自社で使うアプリと、必要な操作が接続対象に含まれるかを確認します。 |
Zapierは外部サービスやデータを接続し、業務のワークフローを自動化する機能を提供します。 出典:Zapier公式:サービス連携
Make
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 機能 | 視覚的な編集画面で複数のアプリをつなぎ、ワークフローを作ります。 |
| 確認 | 処理の分岐、実行回数、エラー時の対応が自社の運用に合うかを確かめます。 |
Makeは視覚的な編集で複数アプリをつなぎ、ワークフローを自動化するサービスです。 出典:Make公式:自動化プラットフォーム
Anyflow Embed:連携を製品へ組み込む場合
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 用途 | SaaSの提供者が、自社製品に外部サービスとの連携を組み込むための仕組みです。 |
| 確認 | 自社の業務で使う道具を探しているのか、自社製品へ連携機能を実装するのかを分けて検討します。 |
公式資料では、SaaSベンダーが決めた処理と、利用者が指定した接続情報等を組み合わせて連携を実行する仕組みを説明しています。 出典:Anyflow Embed公式資料:はじめに
| 確認項目 | 具体的な確認内容 |
|---|---|
| 接続対象サービス | 自社利用中のサービスが公式連携リストにあるか |
| 処理の複雑さへの対応 | 分岐・複数ステップ・条件処理を組めるか |
| 操作画面の言語 | 設定画面とヘルプが日本語で利用できるか |
| 実行回数の制限 | 契約プランごとの実行回数・データ量の上限 |
| エラー時の通知 | 連携失敗時に検知・再実行する仕組みがあるか |
05AI-OCRと業務特化型SaaSのツール
DX Suite(AI-OCR)
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 機能 | 帳票の情報を読み取り、データ化するサービスです。 |
| 確認 | 自社の書類の形式、文字、画像品質で読み取りを試します。 |
DX Suiteは帳票の情報を読み取り、データ化するサービスです。 出典:DX Suite公式:AI OCR
invox(請求書処理の特化型サービス)
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 機能 | 請求書のデータ化と支払・計上処理を支援します。 |
| 確認 | 受領から処理までの範囲と、会計システムへの受け渡し方法を確認します。 |
invox受取請求書は請求書のデータ化と支払・計上処理を支援するサービスです。 出典:invox公式:受取請求書
kintone(業務アプリ構築型)
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 機能 | 業務データを蓄積し、自社の業務アプリを構築します。 |
| 確認 | 必要な項目、担当者の権限、既存システムとの連携を確認します。 |
kintoneは業務データを蓄積し、業務アプリを構築するノーコード・ローコードサービスです。 出典:kintone公式:業務アプリ
freee会計・KING OF TIME
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| freee会計 | 銀行口座やカードの明細から、記帳を支援する機能があります。接続先と仕訳の確認方法を確かめます。 |
| KING OF TIME | 勤務時間や休暇などの勤怠を管理する機能があります。自社の勤務形態と申請・承認の流れを試します。 |
freee会計は、明細の取得と、設定した仕訳ルール等による記帳の機能を案内しています。 出典:freee会計:記帳の自動化
KING OF TIMEの公式ページで、勤怠管理に関する機能を確認できます。 出典:KING OF TIME:勤怠管理の機能
| 比較軸 | 内容 |
|---|---|
| DX Suiteの用途 | 帳票の読み取りとデータ化 |
| invoxの用途 | 請求書のデータ化から支払・計上処理の支援 |
| kintoneの用途 | 業務データの蓄積と業務アプリの構築 |
| AI-OCR共通の確認事項 | 自社帳票の形式での読み取り精度の検証 |
| 特化型SaaS共通の確認事項 | 自社の業務フローとサービスの処理範囲の一致 |
| 共通の確認事項 | 既存システムとのデータ受け渡し方法 |
06ツール選定の判断基準
機能一覧と合わせて、実際に使う担当者がどこまで操作できるか、運用を続けられるかを確かめます。

基準1:現場が使える操作性か
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 担当者 | 実際に運用する人が、デモや試用環境で操作します。 |
| 範囲 | 設定、実行、結果の確認、誤りの修正まで試します。 |
| 記録 | 迷った箇所と、習得や作業にかかった時間を残します。 |
基準2:日本語サポート体制があるか
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 言語 | 担当者が利用できる言語のヘルプと問い合わせ窓口があるかを確認します。 |
| 手段 | 電話、チャット、メールなど、対応手段を確認します。 |
| 時間 | 受付時間と、業務が止まった場合の社内対応を決めます。 |
基準3:自社が使うサービスと連携できるか
公式の接続先にない場合は、APIやファイルでの受け渡しが可能か、個別開発が必要かを調べます。使っているサービスの一覧を用意し、必要な項目と操作まで照合してください。
基準4:費用対効果の試算方法
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 費用 | 利用料に、設定・保守・研修・確認の費用を加えます。 |
| 時間 | 作業が減る時間と、監視・修正に増える時間を記録します。 |
| 換算 | 時間を人件費単価で換算した値は、時間の価値の試算です。現金の支出減とは分けます。 |
| 実績 | 試用で測った変化を、同じ業務量と期間で比較します。 |
| 選定基準 | 導入前の検証方法 |
|---|---|
| 操作性 | トライアル環境で現場担当者が基本操作を試す |
| サポート体制 | 日本語対応の有無・手段・時間帯を契約前に確認 |
| 連携可否 | 自社利用サービス一覧と公式連携リストを照合 |
| 費用対効果 | 導入前の作業時間を実測し、人件費単価で換算して比較 |
| セキュリティ | 認証取得状況・データ保管場所を公式情報で確認 |
07導入を進める5ステップの実践手順
対象を決め、試す条件と担当者をそろえてから導入します。以下の5段階を、自社の業務量や体制に合わせて計画してください。
ステップ1:自動化候補の業務を棚卸しする
まず、社員に「毎週繰り返している定型作業」を書き出してもらいます。作業名・頻度・1回あたりの所要時間をセットで記録し、所要時間の大きい作業から優先順位をつけます。感覚ではなく実測で並べることが、後の効果測定の基礎になります。
ステップ2:1業務に絞ってスモールスタートする
いきなり全社展開せず、効果が見えやすい1業務から着手します。請求書発行、勤怠集計、メール配信など、手順が定まっていて例外が少ない業務が入口として扱いやすい領域です。
ステップ3:効果測定の基準を導入前に決める
「月あたりの作業時間」「処理件数」「ミスの件数」など、測定する指標を導入前に設定します。評価軸が曖昧なままだと、効果の判断ができず現場の継続利用につながりにくくなります。
ステップ4:マニュアル整備と運用責任者の任命
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 設定 | 何を入力し、何を実行するかを残します。 |
| 担当 | 通常の操作と、異常時の対応を担う人を決めます。 |
| 手順 | 止まった際の確認、再開、重複の照合方法を文書化します。 |
ステップ5:成果を社内で共有し横展開する
1つの自動化が動き始めたら、導入前後の記録を社内で共有します。測定に基づく事実の共有が、他部門の自動化検討を進める際の根拠になります。
導入5ステップの全体工程
| ステップ | 成果物・記録するもの |
|---|---|
| 棚卸し | 業務リスト(作業名・頻度・所要時間) |
| スモールスタート | 対象業務の選定理由と範囲のメモ |
| 効果測定 | 導入前の作業時間・処理件数・ミス件数の記録 |
| 運用整備 | 手順書・設定内容の文書・責任者の指名記録 |
| 共有・横展開 | 導入前後の比較記録と次の対象候補 |
08業務自動化で期待できる効果の整理
導入前後で、時間、誤り、担当者の仕事の配分を比較します。一般的な削減率を自社の成果として扱わず、同じ条件で測った記録を使って判断します。
作業時間の削減
処理にかかる時間を、導入前と導入後で比較します。自動処理が動いている時間と、人が準備・確認・修正する時間を分けて記録してください。
人的ミスの低減
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 入力 | 読み取り結果や受け取ったデータを、元の情報と照合します。 |
| 設定 | 計算式、転記先、送信先など、処理の設定を確かめます。 |
| 結果 | 請求や入金など影響のある処理では、結果を確認する担当と方法を決めます。 |
従業員の業務時間の配分
定型作業の時間が減った場合は、その時間をどの仕事へ使ったかも記録します。企画、顧客対応、改善活動など、当初の目的に沿った配分になったかを話し合ってください。
| 効果の種類 | 自社で測定・確認する指標 |
|---|---|
| 時間の削減 | 対象業務の導入前後の月間作業時間 |
| ミスの低減 | 転記・計算ミスの発生件数の推移 |
| 残るリスクの管理 | 自動化後の照合チェックの実施状況 |
| 時間の再配分 | 削減された時間の充当先の記録 |
| 継続性 | 月次の効果測定の実施有無 |
09導入前に確認すべき3つの注意点
注意点1:例外処理が多い業務は自動化に向かない場合がある
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 頻度 | 通常の手順と異なる処理が、どの程度あるかを記録します。 |
| 分岐 | 自動で判断できる条件と、人へ渡す条件を分けます。 |
| 保守 | 条件が変わった際に、誰が設定を直すかを決めます。 |
注意点2:セキュリティ要件の確認漏れ
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 社内規程 | 入力できる情報と、外部サービスへ出せる範囲を確認します。 |
| 契約 | 保存場所、暗号化、アクセス権限など、必要な条件を照合します。 |
| 対外条件 | 取引先から求められる条件がある場合は、担当部門と確認します。 |
注意点3:契約解除時のデータ持ち出し条件
解約時に蓄積したデータを取り出せない契約形態だと、サービスを乗り換えにくくなります。データのエクスポート可否、形式、解約後の保持期間を契約前に確認してください。また、海外製のiPaaSやSaaSではデータ保管先が海外サーバーになる場合があります。データ保管場所に社内・取引先上の制約がある場合は、契約前に保管リージョンを確認する必要があります。
| 注意点 | 契約前に確認する行動 |
|---|---|
| 例外処理の多さ | 同手順で処理できる割合を棚卸しで実測する |
| セキュリティ要件 | 認証取得状況と取引先の要求基準を照合する |
| データ保管場所 | 保管リージョンと社内ルールの適合を確認する |
| データ持ち出し | エクスポート可否・形式・解約後の保持期間を確認する |
| 保守の負担 | 設定変更・例外対応を誰が行うかを決める |
10まとめ:自社の課題1つに絞って始める
業務自動化ツールは、RPA・iPaaS・AI-OCR・業務特化SaaSの4タイプから、自社の課題に合うものを選ぶことが起点です。効果の数値は一般的な宣伝文句ではなく、自社での実測によって判断することがこの記事全体の前提です。
今日からできる最初の行動は、自社で最も時間がかかっている定型業務を1つ書き出すことです。その業務が第2章のどのタイプに該当するかを確認し、該当するツールの公式情報で機能・料金・連携対応を照合し、トライアルで現場の担当者が操作を試す——この順で進めるのが、確認漏れの少ない進め方です。
今日から始める行動の順序
相談の際は、定型業務のリスト(作業名・頻度・所要時間)、現在使用しているサービス名、セキュリティ上の制約を準備してください。
自社の状況を相談する参照した一次資料
実務の進め方はVONDS編集部の整理です。本文で参照した仕組み・手順は、次の公式資料で確認しています。
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